JOURNAL ジャーナル

対馬再訪

2024.10.18
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Written by
ayumi tao

もう10年ほど通っている気がしていたけれど、
実はまだ3年と少し。そんな対馬を再訪しました。

福岡で乗り換え、プロペラ機で向かう道のりは心地よく、遠いからこその特別感があります。

変わらず美しいと感じる海。しかし、その海中では藻場が消失しています。
今年はバリ(アイゴ)の稚魚が多く、藻場再生の検証を目的に網で囲ったエリアも、網の目を稚魚がすり抜け、結果的に藻場が全滅してしまったそうです。
かといって網目を細かくしすぎると日光を遮り、光合成ができなくなるため藻場が育ちません。
絶妙な網目サイズを探りながらの試行錯誤が続いています。

そんな話を漁師兼水産加工会社の皆さんとしながら、1年ぶりに近況報告を交わしました。
長く遠い道のりのように思える取り組みですが、それでもここの人たちは驚くほど元気で生き生きしているのです。
なぜこんなにも前向きでいられるのだろうかと考えさせられました。

今年の訪問日に水揚げされたバリは小ぶりで、身も痩せていました。
海中にバリが好む海藻が枯渇している以上、丸々太るはずもなく、季節的な影響もあります。
これから海水温が下がり冬になると、バリの身も脂が乗り、最も食べ頃の時期を迎えます。
しかし今年の10月はまだ高い気温が続いており、夏の海水温は昨年よりも明らかに高い状態でした。
今年の冬も海水温が下がらなければ、バリは活動を続け、個体数がさらに増加するかもしれません。
あるいは一定の個体数に達した後、減少に転じるのか、または藻場の残る北方の海域を目指して繁殖するのか。
(実際に千葉県でも大量発生が始まっているようです。)

対馬の海を見続けてきた漁師たちとこうした話をする中で、

目の前にある魚を美味しく活用しながら、前を向いて向き合い続ける

という覚悟を決めている彼らの穏やかで圧倒的な力強さに、

またしても背中を押された気がしました。

(写真はノドグロの塩焼き。浜辺でのBBQは、関東から来ると驚くほど豪華に感じます。)